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それも、そうだった。
焦ったって仕方がない。
わからないものは多いけど、それなら探せばいい。
それにこの人の言う通り、そのうち思い出すかもしれない。
「ええ…そうね。ありがとう。」
「いえ。大丈夫ですよ、アリス。アリスはアリスです。」
そう言って男はくしゃりと髪を撫でる。
大きくて、少し細めの指。
そんなことを考えていると、男の名前を聞いていないのに気が付いた。
「ねえ、貴方名前は…?」
アリスが男に訊ねると、男は耳元で答える。
「僕の、名前ですか?それは、僕に興味を持ってくれたからですか?」
男の声が少し明るくなった様に感じられた。
「ええ…まあ、そういうことになるのかしら?」
「良かった!やっと…アリス…」
名前を知らないから知りたい。
それは興味があるからだからなのかは定かではない。
しかし男は何故か喜んでいた。
そして名を、告げる。
「アリス、僕の名前は…
<ザ、ザザッ… > 」
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