‐1‐

7/9
前へ
/67ページ
次へ
それも、そうだった。 焦ったって仕方がない。 わからないものは多いけど、それなら探せばいい。 それにこの人の言う通り、そのうち思い出すかもしれない。 「ええ…そうね。ありがとう。」 「いえ。大丈夫ですよ、アリス。アリスはアリスです。」 そう言って男はくしゃりと髪を撫でる。 大きくて、少し細めの指。 そんなことを考えていると、男の名前を聞いていないのに気が付いた。 「ねえ、貴方名前は…?」 アリスが男に訊ねると、男は耳元で答える。 「僕の、名前ですか?それは、僕に興味を持ってくれたからですか?」 男の声が少し明るくなった様に感じられた。 「ええ…まあ、そういうことになるのかしら?」 「良かった!やっと…アリス…」 名前を知らないから知りたい。 それは興味があるからだからなのかは定かではない。 しかし男は何故か喜んでいた。 そして名を、告げる。 「アリス、僕の名前は…  <ザ、ザザッ… > 」  
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加