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中学校のクラスの同級会が開かれたのは年が明けてすぐの土曜日の夜だった。
同級会といえば夏に開かれるのが主流だと勝手に思い込んでいた田原には高校1年の時に冬に同級会が開かれた時は驚きだった。
それ以来、同級会は必ず年末年始に行われている。
といっても、まだ2回しか開かれていないのだが……。
半ば無理矢理男女の境に座らされた田原の隣は水野由貴だった。
短めだった髪は肩までで、髪の毛は染めていないようだ。
化粧は薄い。
相変わらず元気な声でよく喋り、楽しそうに笑う。
その横で肉をつつき、向かいに座り、居心地が悪そうにしている田辺優にちょっかいを出したりしている自分は、ずいぶん暗く見えるのだろうな、と田原は思っていた。
「暗いぞ、田原」
と思っていた通りの事を言われ、顔を上げた田原に「歩美ちゃんがいないから?」と水野は続けた。
「暗い性格は生まれつきです」
と答え、彼女の問いは無視することに決めた。
渡辺歩美は、就職したらしい。
新年早々から仕事だというのだから、大変だ。
「中学の時は明るかったじゃん」
と言った水野に「じゃ、落ち着きが出てきたということで」と答えた田原は、水野の顔を真っ直ぐに見た。
小さく微笑んだ彼女の方が余程落ち着きが出ている。
ちょこっと覗いた八重歯が可愛らしいといつも思っていた。
「大人びたというより暗いよね」
と水野がいうと周りの女子も賛同の声をあげる。
「これだからお子ちゃまは」
と田原がいうと、今度は一斉にブーイングの声がとんできた。
頭を低くしてそれを回避するようにしていると、自然とその声はおさまる。
「田原は今大学生でしょ?」
とそれぞれの会話に皆が戻っていったのを確認してから水野はそう言った。
「まあ」
と答えた田原に「そっか」と水野の寂しげな声が応じる。
住む場所も、流れる時間も異なってしまった。
それぞれがそれぞれの場所でそれぞれの時間を持ち、やるべき事とやりたい事にさく時間の配分を考える。
水野は、地元の会社の事務職らしい。
元気の良い性格は人気で、さっぱりとした気性や異性とは思えない気さくな雰囲気を知っている田原は、その会社の社員を少し羨ましく思ってもいた。
どうも身近な異性は女性らしい雰囲気が強く近寄り難い。
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