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とっさに弁解しようとした俺の腰を、姉貴はより強い力で抱きしめてくる。いや、締め付けていると言っても過言ではなかった。
「そう言えば弟くん、こっちに来てからやけに色々な女の子と仲良いよね。隣の席にいたのって、前に隣に住んでたあの子だよね? 図書室でも可愛い女の子と本読んでた。あと、屋上で生徒会の副会長さんとお弁当食べてたよね。みんな前に同じ学校だったからって、本当に仲がいいんだね」
「ちょ、姉貴!」
圧迫感に耐えきれなくなった俺は姉貴の手に触れるが、姉貴はそれをどけようとしない。
「今日、どの女の子に告白されたのかな?」
口が動かなかった。喉の水分が根こそぎ奪われるかのようだった。
開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったのか。そんな声がどこかから聞こえるような気がして。
姉貴が、姉貴じゃないような気がして。
「……なんてね」
と、突然ゆっくりと腕がほどかれ、姉貴が立ち上がった。逆に俺は、崩れるように床に座り込んだ。
「さあ、ご飯にしよ。あと、一緒にお風呂」
俺は、姉貴をいつものようにあしらう事ができなかった。
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