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扉を開けて僕が入った先の部屋は大きく広い書斎のような場所だった。
書斎と言っても、この場合どちらかと言うと市立図書館に近い広さだ。本を納めた大きな棚が何段も奥へとずっと続いている。
……これがもし個人の書斎なら、一体どれだけの金持ちなのだろうかと目を疑ってしまう程だ。
僕は足を動かして、書斎の部屋の一番奥から順番に歩いて行った。こうすれば、全体をくまなく確認して見渡せる。もちろん、確認するのは人がいるかいないかだ。
……今思うと僕は小心者なんだなぁ、と改めて実感してしまう。
こうして他人がいるかどうか慎重になって検索するあたりが、小心者、つまりはビビリに値しているのだろう。
自分で言うのも嫌なのだが、そこの所は情けなくもなんとなく自覚してしまう。
「はぁ……」
僕は軽く溜息をついてしまった。
でも、溜息がつける事からして、若干恐怖から少し解放されたと思う。恐怖に雑念が混じっているのがその証拠だ。
やっぱり、見慣れない部屋を歩くという事と狭い部屋からの開放という事は人間にとってストレス発散にはなるものだ。
……ただ、それでも現状に何も変化はなく、事態が最悪な事なのは同じなのだが。
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