プロローグ

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   何か変な事に巻き込まれているのではないかと嫌な考えをしてしまう。  早くここから出して欲しい。僕は帰りを待つ妹の優希や家族の姿を頭の中で想像していた。  今日は母さんの誕生日なのだ。僕と優希は母さんを喜ばせるために、僕たちだけで夕飯を豪華にしようと計画していた。お誕生ケーキも僕と優希が頑張った結果、店と同じ、もしくはそれ以上の出来になった。夕飯も僕が奮いを奮って母さんが大好きなスパゲティを作った。全て順調に進んでいた。    だが僕がケーキのロウソクがない事に気づいて、優希がちょっと手を離せないでいたからお願いをされて、それで……。   「父さん……、母さん……、優希……」    不意に涙が出てしまう。  悲しかった。いきなり訳のわからない部屋にいて、そこから出る事もできない。首元には変な首輪がつけられている。どれもこれも怖い。  どうして僕はこんな所にいるんだ?    「僕が……、僕が何をしたっていうんだ……っ!」    涙を流しながら、ただ大声で叫んだ。その叫び声に呼応したのか、静かにポツンと佇んでいたテレビにいきなり電源が入る。    言っておくが僕は何もしていない。ただ叫んだだけだ。    いきなり電源のついたテレビを気味悪く思いながらも、画面を見つめる。何かが良い方向に変わるのではないかと、ほんの少し期待する。  
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