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『さて、ひと通りルールは説明させてもらった。それでは――』
男が言葉の間に一息入れる。
そうしたら、さっきまであんなに力を入れても開かなかった扉からカチャッと機械音がなり、ガランと開いていく。
僕にはその光景が地獄への入り口に見えてしまった。その入り口を踏み越えてしまえば、もう後戻りできない。だが、そうしなければ僕は助かることができない。
ああ、どうやら、僕は地獄へ招待されるらしい。……それも一生を賭けても得ることが出来ない程の飛びきりの殺戮地獄だ。
神様がいるというのならば、どうか今すぐにこの地獄から解放してほしい。
『……始めよう』
男の言葉が重たく、残酷に聞こえた。
男がそう言うと、テレビの映像がすぐにプツンと途切れる。この部屋に残ったのは無音だけとなった。
手にした拳銃の引き金に指を当てる。これも首輪と同じく、ひんやりした冷たさだった。人の命を奪う冷たさだ。
僕はその引き金を見ず知らずの相手、それも何の罪もない人に果たして引けるのだろうか?
よろめく体を起き上がらせ、残っていた少しの気力で奮い立たせて、ゆっくりと扉へ向けて歩いて行く。
そして、僕は地獄への入り口へ足を踏み越えた。
ここにいるよりかはマシだと、そう思いながら。
――ゲーム開始。
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