5人が本棚に入れています
本棚に追加
「試し、早くやる。魔力、少し。学園、すぐ」
男はカルトルが頷いたのを確認すると、変わらぬ口調で続けた。
カルトルは言われるがまま、まだまだな未熟な魔力操作を行う。カードに魔力を込めるだけとは言え、魔力の扱いが苦手なカルトルにとって、男の言葉がほんのりプレッシャーになる。
「金の縁、特待生、証。憧れ、象徴」
焦りか、緊張か、不安か。カルトルの額から一つ、汗が零れ落ちる。と同時にカルトルは見慣れた風景と別れた。
カルトルの転移を見送った男は自身も転移を行う。二人が転移を行ったその場には、僅かな魔力痕が漂うだけで、それ以外はいつもと変わらぬ風景。
国内で一人の人間が無惨な死を遂げたとは思えぬほどに、それはそれは穏やかなもので、不穏な空気に包まれつつあることに、誰一人として気が付きはしないだろう。
ーーとある人物達を除けば。
最初のコメントを投稿しよう!