1.始まりと出会い

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揺れる髪、転移する前に整えたばかりだが気にする様子もない。 せっかくだ、思うままに行動しろ。そんな父の言葉にカルトルは従う。否、体が勝手に動きだしたのだ、トーイの言葉だけではないだろう。 「おい、そこのゴールド。何をそげに慌てはるのかね?」 群れから外れて走るカルトルはなんと言っても目立つ。思わず声を掛けてしまう、そんな気持ちは理解できる。 だからといって、自分も群れから外れ走る生徒は多くない。しかし声の主はその少ない部類に入った。 自分に向けられた言葉だと気が付いたカルトルは走る速度を緩めることなく、顔を後ろに向けて一言だけ。 「何となく」 カルトルの返事を聞いた後を追う男子はハデにスッ転んだ。 「『何となく』で走んなや!」 立ち上がりながら鋭くツッコミを入れ、直ぐ様走り出す。 そんな言葉を背に受けるもカルトルは表情一つ変えない。ツッコミというモノ知らない彼にとっては、ただの文句にしか聞こえなかったのだ。
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