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おそらく今のままだとカルトルに追い付けないと判断したのだろう、目を覆うほど長い前髪をかき揚げ、速度を速める。つり上がった細い瞳が顔を覗かせた。
その瞳はしっかりとカルトルを捉えている。
「おい、ゴールド。お前さん名前は何て?」
「名前? カルトルだけど?」
ついにはカルトルの横に並び、ここぞとばかりに名前を尋ねる。が、言葉短に返され自然に舌打ちをしてしまった、男子生徒。次に溜め息を溢し、カルトルの横顔に視線を向ける。
「理解した。ワイはメルサルサ=ニテヤビルゲス。生まれはこの街で、おそらくあんさんと同い年。趣味は人を笑わすことで、好きな食べ物は「うるさいよ……」
カルトルはメルサルサの言葉を遮ると少し速度を上げる。
ただ何となくで目指していた屋内修練場が見えて来たのだ。気持ちが速れば走る速読も速まる、彼はそれだけ今日という日を待ち望んでいた。
「ちょ、待てこら~!!」
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