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慌ただしく廊下を走る男性。今日は待ち望んだ第一子が生まれる予定日。先ほど入った連絡によると、もう直ぐ生まれそうだという。
部屋を間違えているあたり、予定日とはいえ、まさか本当に生まれるとは思ってはいなかったのだろう。
「さすがは、ばあ様……。本当に今日だとは……」
クラウスは山のようにある自身の仕事を途中で放り投げ、急いで出産のために用意された部屋へと向う。
張り詰めた空気の中、廊下を右に曲がると、その先に血相を変え忙しく動きまわる使用人達の姿がクラウスの瞳に映る。どうやら目的の部屋にたどり着いたようで、クラウスは歩みを少し緩めた。
「旦那様!」
クラウスに気が付いた一人の使用人が震えた声を上げる。
強張った表情しから知らぬ使用人は、緊張の色が伺えるクラウスの表情に、思わず息を呑んだ。
使用人達が頭を下げるが、クラウスは目もくれず扉を荒々しく開けた。
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