1.始まりと出会い

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朝日が顔を覗かせ始めると同時に、二人の一日は始まる。 アルタール王国の西部、ユンステル地方の小さな田舎町。町の人々は農作物で生計を立てているのだが、辺りを治める七大貴族の一つ、ナミーストリア家の毎月の取り立てにギリギリの生活を強いられている。 町の者の殆どが朝早くから仕事を始めるため、珍しい光景ではないのだが、二人の行動は珍しい。 酷く傷んだボロボロの木剣を片手に朝稽古は、少年が六つの時からの日課となっている。父の素振りに興味を持ったことが始まりだった。 呑み込みの早さに、少年の父は自分の持つ知識を全て教え込んだ。 今では、老い始めの体にむちを打ちながらなんとか続けられる程度。我が子の上達の早さに心底驚かされている。 「ここまでにしようか」 額の汗を左手の甲で拭い息を整えると、少年の父、トーイ・スクダルトはそう言った。
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