1.始まりと出会い

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家に戻った二人。カルトルはシャワーを浴びるため浴室へ。トーイは妻と朝食の用意を。 10年近く続いていた日課も今日で終わり。そんな思いがトーイの中で駆け巡っている。 町の小さな学校で覚えた読み書きや一般常識、知識。王都に行くと馬鹿にされるのではないか。親バカのトーイは心配で仕方がなかった。 「あうっ……」 案の定、包丁で指を軽く切ってしまった。傷口から覗いて来る真っ赤な血が食材に移らぬ様、すぐに処置を施す。 「あんた、今日だけは新聞読んでな。少しは落ち着くだろうよ」 男勝りな言葉遣いが印象的な彼女はトーイの妻であり、カルトルの母である。 前髪は真ん中の辺りで左右に分けられ、後ろ髪は短い。その色は夫、子とお揃いの金。 目は細く、肌は畑仕事のせいか少し焼けている。 そんな彼女の名は、ミール。ミール・スクダルト。
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