魔王の息子

3/7
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
部屋を開けたボクの目に飛び込んできたのは勇者だった。 装備や格好は勇者のそれだが、目つきが悪く、額に傷がある。 そして、なぜかくわえタバコ。 なんてガラだ。 どっちかっつーと、こいつチンピラAだろ? っていうか魔王城内は先週から禁煙なのに。 しかし、そこで、そんなことを考えている場合でないことに気づいた。 ボクが勇者の次に見てしまったもの。 それは…。 「す、すいません、すいません。もう悪いことはしません」 父は勇者に土下座しまくっていた。 そう、ボクの父親は魔王なのだ。 いや、魔王なのか? 目の前の光景を見ると、息子のボクもよくわからなくなる。 しかし、なんだこの状況? 誰か「ドッキリ」って書いてある札でも持ってくんのか? 「すいません、すいません。本当にすいません。ごめんなさい。反省してます」 そうやって相変わらず土下座し続ける父を見て、勇者はタバコをふかした。 「いや、ね。オレも鬼や魔王じゃないよ。っていうか魔王はオマエだもんな。この城にある金品とか、あと武器とか、なんかそういうのくれたら許してやるんだけど。あ、ついでに隣村にかけた呪い解いてくれればなお良し」 なんて勇者だ。見た目で人は判断できないと聞いていたが、この人の場合、見た目=中身じゃないか。 武器とか金品とか、その辺の不良とやってることが同じだ。 っていうか隣村を救うという正義の使命をついで扱い?
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!