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部屋を開けたボクの目に飛び込んできたのは勇者だった。
装備や格好は勇者のそれだが、目つきが悪く、額に傷がある。
そして、なぜかくわえタバコ。
なんてガラだ。
どっちかっつーと、こいつチンピラAだろ?
っていうか魔王城内は先週から禁煙なのに。
しかし、そこで、そんなことを考えている場合でないことに気づいた。
ボクが勇者の次に見てしまったもの。
それは…。
「す、すいません、すいません。もう悪いことはしません」
父は勇者に土下座しまくっていた。
そう、ボクの父親は魔王なのだ。
いや、魔王なのか?
目の前の光景を見ると、息子のボクもよくわからなくなる。
しかし、なんだこの状況?
誰か「ドッキリ」って書いてある札でも持ってくんのか?
「すいません、すいません。本当にすいません。ごめんなさい。反省してます」
そうやって相変わらず土下座し続ける父を見て、勇者はタバコをふかした。
「いや、ね。オレも鬼や魔王じゃないよ。っていうか魔王はオマエだもんな。この城にある金品とか、あと武器とか、なんかそういうのくれたら許してやるんだけど。あ、ついでに隣村にかけた呪い解いてくれればなお良し」
なんて勇者だ。見た目で人は判断できないと聞いていたが、この人の場合、見た目=中身じゃないか。
武器とか金品とか、その辺の不良とやってることが同じだ。
っていうか隣村を救うという正義の使命をついで扱い?
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