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今から五十年ほど昔の十九世紀中頃、フランスはパリに奇妙な見世物を披露する男が現れた。男は掌から火を放ち、空を飛翔して見せた。
彼は初め奇術師として民衆に受け入れられたが当の本人はれっきとした“術”であると主張し、見込んだ人間へ伝授していくことで体験者を通じてそれら術がちゃちな手品の類ではないという認識を広げていった。その流れが続くうちにやがて集団を形成するようになる。
彼らの存在が広く知られるようになると空を飛ぶ姿が不吉なものを彷彿とさせるとしてローマを中心に教会の反発を受けるようになる。そこで彼ら集団の始祖であり代表者でもあるガジェットと名乗る出所不明の男は早々にフランス王侯貴族へと手を回し、術を分け与えることで取り入り強力な後ろ盾を確保した。
その後彼ら術の使い手は“理法使い”と名乗るようになり、その特殊な力を用いて革新を図ることを目的とし社会に働きかけていった。飛翔を用いた運送や通信への着手は特に早く、そうした変化に取り残されまいとした商人の後押しを得ることで彼らの存在は重要さを増した。その後も彼らの勢いは止まらず、遂には上流社会の枠を飛び出し術に魅了された、或いは好奇心に突き動かされた市民が加わることで集団は更に巨大なものへと膨れ上がった。
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