第二章

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 魔族の中には比較的温厚で、人間とよく似た姿形をした者もいる。  まあ、戦闘形態になりゃどいつも同じだけどな。普段は人間と同じ姿をして人に交じり、平穏に暮らしている魔族だっているのだ。  そんな魔族の中には、人間との間に子を成す者もいた。  魔族と知らずに結ばれる者、知った上で受入れる者、その経緯は様々だが、人と魔族の混血児は少なからず存在した。  俺もその一人。  父親が天狼(カエルムルプス)と呼ばれる魔族で、母親が人間のハーフだ。  天狼族はその名の通り狼に似た戦闘形態を持つ魔族で、昨日の狼野郎とはまあ、遠い親戚みたいなもんだ。  普段は人間と殆ど変わらない姿で人に交じって平穏に暮らしているが、ひとたび戦闘形態に変じれば、狼系魔族の中では最強と言われている。  その血のおかげで、俺も戦闘形態になればその辺の魔族には負けない程度には強い。普段でも、ただの人間に比べたらかなりタフだし力も強い。だからこそ、魔狩人なんかやってられるんだけどな。  しかし好戦的な魔族から見れば、天狼族の血を引く混血の俺は恰好の獲物でしかなく。  そもそも好戦的な連中は血が混じる事を疎ましく思っていたりするから、混血の俺を殺す事に躊躇いなんかある筈もなく。  そんな俺が魔狩人なんかやってるもんだから、それこそ狙ってくださいと言ってるようなもんで。  かくして昨日のような仕儀と相成る。  要するに、これもまたいつもの事だ。  人間から悪意を向けられ忌み嫌われるのも、魔族から敵意を向けられ命を狙われるのも。  うんざりするくらいいつもの事で、嫌になる程慣れている。  そして、世間の風の冷たさと自分の馬鹿さ加減にへこむのも毎度の事だった。
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