第二章

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 肩を落としてとぼとぼと歩く俺の斜め前を行くレイは、朝からずっと機嫌が悪かった。  一度もこっちを振り向かないし、声を掛けても返事もない。全身から「話しかけないでよね」オーラを発しながら、つんと顎を上げて前を見据え、足早に歩いて行く。  あの後、自分の血の匂いで我を失った俺は、奴と町中で大暴れしてしまい、巻き添えを食った民家が四軒ばかし崩壊した。  レイが避難を呼び掛けたおかげで人的被害がなかった事がせめてもの救いだが、あれの賠償金って……ギルドの保険下りる、よなぁ?  ひと暴れして満足したらしい狼野郎が引き上げた後、我に返った俺とレイは、揃って町から追い出された。  まあ、当然と言えば当然だ。  仕方ないから昨夜は野宿して、今朝は不味い携帯食料と罠を仕掛けて捕らえた野鼠で腹を満たした後、次の指令を受け取るべく、今は所属するギルドの支部がある街へと向かっているところだ。  俺達は、『魔狩人』と呼ばれている。  この世界には、人間と魔族と言う異なる二つの種族が住んでいた。  絶対数が圧倒的に多いのは人間。しかし人間は魔族に比べ遥かに脆弱で、魔族は数こそ少ないものの、その生命力の強さと人間とは比較にならない優れた身体能力によって、数で遥かに勝る人間と対等以上の関係を保っている。  魔族は人に似た姿をしている者もいるが、概ね獣に似た姿の者が多く、それらはその姿に相応しい獣の本性でもって、気の向くままに人間を襲い惨殺した。  ひ弱な人間は魔族に抵抗する事もできずに、なす術なく次々とその牙に掛かって殺されていった。  そんな魔族に対抗すべく、人間の中から生まれたのが『魔狩人』だ。  魔族に対抗しうる腕力や特殊能力、魔力などを持ち、その力で人に仇なす魔族を狩る。  魔狩人となれる人間は少なく、貴重な人材を失わない為に単独行動は敬遠され、より身の安全と様々な便宜を図る為にギルドが組織された。
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