姫君への憂鬱

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 二人は右手をあげたまま、暫く見つめあっていた。  が、魔王は重大な事態に気が付いた。 「夜明けだ! やべえ、怖いよママー!」 「ママ? マザコンなの? 自重しろ」  姫の反応も気にかけず、魔王は窓に鎧戸をかけた。 安心仕切った魔王はうさぎの頭を取る。  赤紫の長い髪が、汗で首筋に張り付いている。 紫の瞳は魔族のそれを表し、縦に割れた瞳孔は冷たい光をともしていた。  うさぎの胴体部分を脱ぐと、細マッチョな裸体が、汗の粒の煌めきと所々に白いふわふわを纏っていた。  姫は立ち上がった。  魔王も、姫を見た。 二人は寄り添い、手を取り合うと、どちらからともなく声が上がった。 「イェス、フォーリンラブ!」  実の所、何がイェスなのか解らないが、姫の心臓は高く早く鳴り出し、魔王の股間には稲妻が走った。  姫はドレスをかなぐり捨て、魔王を押し倒し、二人はベッドに縺れこんだ。 「ママー俺、男になるよー!」  魔王は白いシーツと共に、美しい、白絹の滑らかな肌の姫の肢体に吸い付き覆い被さった。
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