姫君への憂鬱

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「最っ高おおおん!」  そう言って、二人は共に果てた。  横でスヤスヤと眠りについた魔王を見ながら姫は微笑んだ。 姫が魔王の胸に顔を埋めると覚えのある甘い香りが、姫の心を擽る。 「……何かしら?」  不思議に思った姫は魔王を起こさないように、ベッドからそっと抜け出すとうさぎの着ぐるみ(胴体部分)を覗きこんだ。  うさぎの着ぐるみが膨らんでいた理由が、そこには確かにあった。 「何これ凄いマシュマロ!」 先ほど事に及ぶ前に体についていたのも、汗でくっついたこれだったのだ。  他に詰める物が無かったのか、はたまた好きでそうしたのかピンクや白の、所々魔王の汗で溶けているマシュマロがこれでもかと言うほど詰まっていた。  そこへ、階段を登ってくる音がして、姫は慌てて魔王を起こした。 「誰か来るわ、お早く」  そう言って姫は寝ぼけ眼の魔王と着ぐるみをベッドの下に押し込み、隠す場所の無い着ぐるみの頭部を被ってドレスを来た。 「あけるよ」  ノックの音と共に声をかけたのは姫の侍女を連れた姫の父親……王様であった。 「ええ……ええ、いいわ」 返事を確認し、王が戸を開けると、ドレスを前後ろに来てうさぎの頭を被った人物が立っていた。  声からして自分の可愛い娘なのは疑い無いが、その恰好をどう言ったらいいか解らなかった。  当の姫も父王に何と言っていいか解らず、迷った挙げ句にそっと力なく右手を上げた。 「おっす、腹減った飯くれ」  父王は驚いて何も言えず、ふとベッドの下で目を見開き、青白い顔をして鼻血を出して身じろぎもしない青年を見つけた。  王は魔王のホラーゲームのような姿と位置に、恐怖で卒倒した。
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