いつもの憂鬱

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「報告があります」  仮面を被った男、四天王と呼ばれる部下の面々が揃い卓を囲んでいる。 実に豪奢な食卓であった。  四天王に囲まれ上座に座る、華奢な男こそ、何を隠そう隠す事無く、魔王である。 「また勇者とかが来るとかそんなんなんだろ」  やけっぱちな口調の魔王に四天王は顔を見合わせた。 「仰る通り、勇者が攻めてくる模様です」  四天王の一人、リーダーのゼストが言った。 「もう何の用なんだよいつもいつも!」  魔王は銀杯の葡萄酒を飲み干し、卓に乱暴に置く。 一杯目の酒で既に酔っているようであった。 「勇者とかよお、もう何人目なんだよお」  若干甘え口調の魔王にゼストは擽られる母性愛を抑え、敢えて厳しい口調で続ける。 「目的はわかりません。しかし魔界と人界を繋ぐルートを作った魔法使いが居る模様です」  頬をほんのり紅く染め、とろんとした目で銀杯を手にし、魔王は2杯目を飲み干した。 「最近そんなんばっかりじゃねぇかよう、こっちは魔界だけで精一杯なんだよお、俺が何をしたんだよ!」  魔王は最早、半べそである。  ゼスト含む四天王のガスト、ボスト、ダストは顔を見合わせ仮面の中で苦笑いしている。 しかし、彼らには愛すべき、護るべき魔王である。 素面であればしっかりと指揮を取り魔物を統べ、策を練ってくれるはずである。  今は酔いが醒めるのを待つしかなさそうだ。 「魔王ってだけで狙われるなんてよお、もう何千年もよお、うんざりだよおもう、うんざりだよお」
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