いつもの憂鬱

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 魔王がふと目を開けると、そこは食堂で、顔を傾ければご馳走はあらかた無くなっていた。  魔王は大好きな林檎のプディングが無くなっていることに一瞬むっとしかけたが、自分を見下ろしている4人の男達に気が付き頭を上げると抑揚を殺した低い声で言った。 「眠ってしまったようで済まないな。 で、勇者とか名乗る一行の事であったな」 「はい」  垂れたヨダレを綺麗なナプキンで拭いている魔王に、ガストが返事をした。 「西の氷の城に攻め込もうとし魔物との戦いで手負いになり近くの村に退避した様ですが、まだ気の抜ける状態ではありません」  ガストが言うと、魔王は少し考えて、ダストに声をかけた。 「火山のふもとの火の城はどうだ?」 「はっ、火の城は他の勇者一行に攻め入られましたが、溶岩をかけてやりまして、撃退致しました」  うむ、と満足そうに呻いて、魔王はガストに手負いの魔物が居るかどうかと問うた。 「一体は戦死しました故、手厚く葬りました。勇者一行を退避させましたるはゴーレムです故、それ以上の痛手は御座いませんでした」  ふむ、と魔王は少し肩を落とした。 ガストも部下を失った悲しみから立ち直れてはおらず、唇をわななかせている。 「魔王様、悪魔ならまだ蘇生の手が打てます。 が、魔物は数が減るばかりに御座います。 城の護衛に、どうかゴーレムをお願い出来ませんでしょうか?」  ゼストの提案に魔王は暫し口を閉ざしていた。  強力で精巧なゴーレムを造る事が出来るのは魔界に只一人、魔王だけなのである。  暫しの沈黙のあと魔王はゆっくりと口を開いた。 「ええ、やだ。 疲れるもの」
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