いつもの憂鬱

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「うーん、気に入らないならもう一個……」  魔王が言い終わる前にゼストが其れを遮った。 「素晴らしい、細かな所まで出来てますね。さぁ魔方陣のご用意を」  これ以上異様な何かを出されては困ると判断したからだ。  うむ、と返事をした魔王は小粋なステップを踏みながら手近にあった石灰石を手に取り、床に魔方陣を描いてゆく。 「たんたん狸のちんたまはー」  若干間違った歌詞にダストが呆れた顔で見守る中魔王は魔方陣を描き上げた。  巨大化、必要数へ増殖と要所への転送を一度に出来る魔方陣である。  魔王は魔方陣の真ん中に2体のゴーレムを置くと、目を閉じて口の中で呪を唱えた。 「汝らに継ぐ。各々の場にて、魔界を守る己が任を果たせ」  魔王が言い付けると、小さなゴーレム2体は跪いた。 「御意」 ゴーレムがふと消え、風も無いのに魔方陣が真ん中から円を吹くように消した。  四天王がふと机を見やると、精巧に象られたピーマンに手足がはえたものが置かれていた。  ピーマン嫌いな魔王に対し、勿体無いお化けかよ!という言葉を飲み込み、四天王は賛辞を述べた。  魔王に丁重に礼と労いの言葉をかけて、四天王達はそそくさと帰って行った。  その夜、魔王は退屈で仕方無かった。  侵入した勇者は悉くゴーレムがビームブレードやキン○バスターで皆殺しに、或いは辱しめて追い返しするしで、魔王には遣ることが無いのである。  ふと、思いついたように、魔王は着替えてひっそりと城を出た。 人間界は月夜。 良い日和である。  目立ちそうなものだが、衛兵やゴーレムにすら気付かれなかったその衣装……。  それは、白いうさぎの着ぐるみであった。
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