姫君への憂鬱

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 衛兵ゴーレムは、このうさぎの着ぐるみの人物が作り主だと解っているので難なく(実は魔王にとっては恐怖の連続だったが)人界へと行き着いた。  魔王はスキップしながら尻をプリプリ、人界を行く。 人界は夜の戸張が降り、家々の窓から漏れる光は魔王の目をちくちくと刺すような痛みをもたらしたが、着ぐるみの中では涙をながしながら、でも自由奔放にスキップし続けた。 「魔界が恋しいよう、目が痛いよう、もうやだ、楽しい!」  支離滅裂な言葉を吐き散らかしながら魔王がたどりついたのは割合に小さな城であった。  魔王は静けさと暗闇に包まれたその城の、一番高い塔の上の窓からただ一つ漏れるゆるい灯りに気を止めた。  細い蝋燭の灯りだろう、魔王の目を刺すような強い光は無く、部屋を揺らめいて照らすちらちらとした儚い光であった。 「今ならやれそうな気がする!負ける気がしねえぜ!」  魔王は勢いよく飛びはね高い塀を華麗に飛び越える……つもりでいた。  魔王は見事に塀に体全体でぶつかり、目には星が飛んだ。 「うげらぼぁ!」 魔王は気を失った。
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