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刑事部長への挨拶を済ませた美冬は、次に捜査一課長のもとへ。 課長のデスクへ向かう美冬の姿に、捜査一課所属刑事達の視線が集まる。 その中でも一層興味深げに美冬を見ている3人の刑事が口を開く。 「加世田先輩、来ましたよ。噂の管理官殿が。」 「ああ、来たな。」 「あれがお嬢さん管理官殿か。」 一人は楽しそうな表情で、一人は訝しげに、一人は下向きの老眼を直しながら。 自分への視線は感じながらも、美冬は背筋を伸ばし真っ直ぐ捜査一課長のデスクへ歩いて行った。 「確か一昨年まで鑑識にいたんですよね。」 3人の中で一番若い安藤刑事が切り出す。 「よくここに鑑識資料届けに来てたよなあ、加世田。」 定位置に直した老眼がまた下向きになっている片瀬刑事。 そして机の上に座り脚を組んで腕組みしている加世田刑事が力をこめて 「俺は前からアイツが気にくわねえ!」 は?と安藤と片瀬は顔を見合わせた。 「え?先輩、あの人となんかあったんですか?」 「一昨年の夏に神奈川県警と合同で捜査したでかいヤマがあっただろ。」 課長のデスクの方を睨みながら加世田が低い声で言う。 「はい、犯人(ホシ)の目星はついていたのになかなか物証が出なかったんでしたよね。」 「ああ。でもやっと犯人の名義の車両を見つけたじゃねえか。」 「車内にはホトケさんの血痕がべっとりだったんだよな。」 「その血痕鑑定を八木に頼もうとしたが席を外していた。だからアイツに頼んだんだ。」 安藤はその時のことを思い出し、 「あ~~~、何度頼んでも頑としてやってくれなかった!先輩すごい怒って帰ってきましたよね。あの時の人だったんだ。」 その時の怒りが甦ったらしく、加世田は拳を握り締めていた。 「犯人が特定出来る決定的な物証だからって何度も言ったのにアイツ、『順番は順番ですから!』って・・・八木が戻って来なかったら犯人は高飛びしてたかもしれなかったんだ。あんな高慢ちきな女の命令なんか聞けるかってんだ!」 「でもなあ加世田、いくら高慢ちきでも上官は上官だからなあ・・・。命令聞かねえって訳にはいかねえだろ。」 「そうですよ先輩~。逆らう訳にはいかないでしょ。」 「あ~~~!胸糞悪ぃ!!」 加世田はそう言い放ちそっぽを向いた。
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