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「お見合い相手がこの肉をくれたんですか……凄いですね。」
俺は一枚二千円もするという高級牛肉にとき玉子を絡めて頬張る。舌の上でとろける肉の油がたまらない……ほとんど噛まないうちに肉がどこかへ行ってしまう。
「そうなのよ……肉卸問屋の三男で……これ十箱もくれたからたくさん食べてね。」
一箱5枚だから全部で十万円……羽振りの良い見合い相手だ。
「で、千代さんどうだったんですか?お見合い相手は。」
「どうって……あまり好みじゃないし……それなのに二日も温泉街を連れ回されて……」
「お見合いで温泉?珍しいですね。」
「彼の父親が温泉街に幾つか旅館を経営してるのよ。だから……今、私無職だし暇だからってお父さんが……」
「前田のオジサンも行ったんですね。」
「そう、でも初日だけ。二日目からは彼と二人きり……夜は一人になれるけど辛かったのよ……私、男の人苦手だし……」
その後も千代さんの話は永遠と続く。
俺は霜降り過ぎてみんなが二、三枚食べて飽きたという肉の残りを冷蔵庫にしまおうとした
「あれ……さすがに全部は入らないな。」
「お兄ちゃん冷凍庫は?」
「そっちもいっぱいだから……どうしよう?万梨阿の家にでもあげようかな?」
「そうだね、クッキーのお礼もあるし万梨阿さんに届けてあげなよ。」
「私もそれがいいと思いますよ。」
万梨阿にあげるという意見に賛同する小夜子と真燐。高級牛肉を小夜子は二枚、真燐は一枚食べてギブアップしていた。
庶民には高級牛肉が合わないのか?それともこの二人……特に小夜子はかなり正月太りしているのでダイエットなのか……?
「解った、じゃあ電話してくる。」
万梨阿に電話すると来て大丈夫だと言うので俺は肉を3箱紙袋に入れて家を出た。
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