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それから何のアクシデントもなく森を歩いていくと道が見えてきた。
看板が立ててある。
『↑キサラの町 ↓与奪の森』
「キサラって木更津市の略か?」
木更津市ってのはあのー、アクアラインが繋がってるとこだよね。
「ツッコミどころ違くないか?」
「おっ、日本語じゃん!」
「そうだ。だが、与奪の森なんていう物騒な森は聞いたことがない。ま、キサラの町とやらに行けばわかるだろうな」
さすが我が相棒。ここが日本じゃないとわかっても慌てないとは。
俺?平常を装っているけど内心焦りまくりっす。
だって知らない場所だよ?地名にカタカナだよ?
母上の温もりが恋し
くはないけど、やっぱり我が家に帰ってゴロゴロしながらポテチ食ってケータイ弄りたい。
明日は妹の墓参りに行く予定だったし。
いきなり盗賊っぽい人が茂みから出てきてもおかしくないような道を歩く俺達。
瑠輝は何かを考えているのか無言だ。
日本人は沈黙を嫌うってどこかに書いてあったのに。
まーいいや。会話したら俺の焦りが相棒にバレちまう。プライドに関わったりするのでそれは裂けたい。違う、避けたい。
裂けたいとかドMじゃねーか!
なんて自分にツッコミを入れているうちに、木更……じゃなくて(紛らわしーんだよコノヤロー)キサラの町のものと思われる門が見えてきた。
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