バスジャック編

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「洋服屋さん!」   「……ゲーム屋さん」   「じゃーんけーん…」 「じゃーんけーん…」   立派なカメラを首から下げている方の女は人目もはばからず、大きくテイクバックをとった   対する小さい女の子は、それに何のリアクションも取らずにいる 「ぽんっっっ!」 「……ぽん」   力の限りに開かれた悠の右手は、玲の力ないVサインの前に破れ去った 「なんでよー!せっかく中心街まで来たんだからオシャレな服とか見たいよー!」 「……ルールは絶対」   玲は先にすたすたと歩きだしてしまった   悠も渋々とその後に付いていく     傍から見たら、小さい妹が勝手に歩き出し、それを追い掛ける姉に見えるだろう   しかし、実際は逆だと言うのだから信じられない     店に着いた玲はそれがどこにあるか知っていたかのように真っ直ぐ歩きだした 「で、お姉ちゃんが欲しいゲームがこれなわけ?」 「……うん」   「ヌバミジの冒険…何これ?タイトルからしてB級じゃない!」   「……新発売…楽しみにしてたの…」 「あー、はいはい。じゃあさっさと買って来たら?」 「…悠には…やらせないから…」 「どうせやらないわよっ!」 玲はレジへと向かう   その足取りは軽く、背中からも喜びが溢れているのが悠には分かった
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