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「もういいわ…早く帰って寝る…ちょうどバス停も近くにあるし…」
「…電車」
「お姉ちゃん、駅はここから歩いて30分はかかるわよ?料金もあまり変わらないし、バスで…」
「…電車」
もはや二人の間に言葉はいらなかった
「じゃーんけーん…」
「じゃーんけーん…」
「ぽんっっっ!」
「……ぽん」
悠は高々と右手をあげる
「私の勝利っ!見てこの神々しいVサイン!そうよ!私は今日から【チョキ使いの悠】を名乗るわ!」
「…あなたが勝つと…ろくなことが…ない…」
「悔し紛れはやめて、さぁ行きましょー!」
玲の手を引っ張るようにして、悠は力強く歩きだした
しばらくしてバスがやってきた
中は思ったより空いていたため、二人は椅子に座ることが出来た
二人並んで座ると、より一層、姉妹関係が逆に見える
「あら、お姉ちゃんとお出掛けかしら?」
通路を挟んで隣にいたおばあちゃんが話し掛けてきた
「はい…出来の悪い妹を持つと…大変で…」
「そ、そうなの?ほほほ…」
玲が受け答えをしたので、おばあちゃんは少し困惑した表情だった
二人を乗せたバスが次の停留所で止まる
乗り込んで来たのは一人のおじいさん
…と遅れて何故か、覆面を被った二人組が駆け込んできた
その勢いのまま、一人は運転手の側へ駆け寄り、もう一人が通路の中央に立つ
この瞬間に、ほとんどの乗客はすぐに自分たちに何が起きたか理解出来た
「このバスはたった今、我々の手によってジャックされた!おとなしくしていれば危害は加えるつもりはない!」
男の手には銃が握られている
「……ほら…ろくなことが起きない…」
「お姉ちゃん…お願いだから夢だと言ってちょうだい…」
玲は冷静に、悠の太ももを軽くつねった
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