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「ベアーを動かすのですか?了解です。」
熊…ベアーを出動させる旨を確認したリザードはマンティスに綺麗な姿勢で敬礼をすると、踵を返し部屋の出入口である扉まで歩を進める。そして再び踵を返すと正面、部屋の奥の壁に掲げられている狼の紋章に向かい敬礼した。
「総ては我らが偉大なる総統の為に…ハイル・ヴァーミリオン!」
紋章に対して敬礼を済ませたリザードはマンティスを見遣り再度敬礼を行い、ゆっくりと扉を開けると素早く退室してゆくのだった…。
「ふぅ…リザードは真面目だね。まったく。さて…こちらも動かないとな。」
室内に一人残されたマンティスは独白しながら机の端に設置されている電話を手に取り何処かに通信を始める。どうやら彼の独白は癖のようなものなのだろう。電話が相手に繋がるまでの間にも彼は書類を確認しながらぶつぶつと呟いていた。
『こちら開発部担当のバイパーです。ご用件の方は発信音の後に…』
「やぁ毒蛇。僕だよ。」
明らかに留守番電話ではない女性の声に動じることなく、かつ電話の向こうの相手の冗談とも取れる言葉を完全に無視してマンティスは話を進めようとしていた。
『は!?えっ!?マンティス様!!?こ…これは申し訳ございません!!ご用件は何でございますか!?』
電話の主がマンティスと気付くや否や女性、バイパーは慌てふためきながら無礼を働いたことを謝罪し、改めて用件を聞く旨をマンティスに伝える。マンティス本人はとりわけ気にしている様子もなく、彼女が用件を聞いてくれることを確認し、言葉を続ける。
「例のマシン、どうなっている?虎…雅人くん用の。」
書類の山に挟まる一枚の写真となんらかの設計図らしき書類を見遣りながらマンティスは口を開いた。
「……例のマシン。アレですね、ご安心下さい。既に試作機のテストも完了しております。実働機はあと2日ほどあれば完成するかと。」
彼女・バイパーは用件の内容を把握するなり、実に開発部の所員らしくキリッとした声でマンティスの質問に返答した。
これはマンティスにとってとても嬉しい内容であることに間違いはない。彼女はそれを確信していた。
「そうか……。『クロイツァー』も完成は近いか。ありがとう。焦らず完璧に仕上げておくれよ。」
穏やかな声でマンティスはバイパーに伝えると受話器を本体に戻し、椅子に腰を深く沈めた。
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