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月明かりが差し込む林の中はまさに不気味の一言に尽きる。地を踏む度に細枝が折れる音が響き、より一掃の不気味さを醸し出していた。
林の中に踏み入ること数十分。男は自分の目を疑った。
「し…死んでるのか?」
彼の言葉通り、そこにはあの血だらけの若者の遺体が横たわっていたのである。
「う…うわぁぁぁっ!!」
男は情けないほどに滑稽な悲鳴を上げてその場から逃げ出そうと踵を返す。そしてさらに悲鳴を上げることとなった。
男が踵を返したと同時に木の上からなにかが降ってきたのである。人のようにも見えるが明らかに人間ではない何か。
「と…鳥のバケモノ…怪人…!?」
暗い闇夜が視界に捉えたモノは、まさに鳥の怪人そのものであった。
「そうか、『合格者』はキミだったのか……おめでとう。貴方を歓迎するわ。」
怯える男をマスクの『眼』を伝って見遣り、満足そうに怪人は呟き翼を広げた。勢い良く広がる翼。夜風に舞う白き羽根。
それらが男の視界を覆い尽くした刹那、彼の下腹部に激しく打ち込まれる拳打。
男が気を失う前に理解できたのはその程度のことであった。
冷たい、いや、肌寒い。身体の芯から冷えるような感覚が全身を駆け、男は閉ざされていた瞼を開ける。何処かの建物の室内なのだろうか、闇の空間にポツポツと赤く光る蛍光灯。
混濁とする意識のなか、男は思い出すように考えていた。何故こんなにも寒い、というよりは冷たいのかを。
(たしか…単車でコケたヤツを見つけて…それで…)
ぼんやりとながら思い出されていく記憶。それは男に恐怖をも思い出させることとなる。
浮かび上がる映像、それは鳥の怪人に襲われる自分と真っ赤に染まる若者の死体。気を失う直前に見た光景のせいか鮮明に思い出されてゆく恐怖。
(そうだ…思い出した。俺は鳥の仮面を被った怪人に襲われて…)
総てを思い出した時、漠然とし形のなかった恐怖心は規模を拡大させる。暗い空間にも眼が慣れてきた男は首を動かし周囲を見遣る。
「な…なんだってんだ?」
彼が視界に捉えたのは両手両足をガッチリと拘束した鉄製の拘束具。冷たいと感じたのはこれが原因。そして肌寒いと感じたのは自分が裸だったからだ。
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