パンドラドンパ

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パンドラドンパ

幾重にも幾重にも張られた罠。誰にも抜けられないプロテクトの先に、僕はラドンパの箱を置いた。 これで、他人に対しては鉄壁の防御が約束されたことになる。 僕は人間だ。 人間は、記憶を有する。 記憶には、いいものも悪いものもある。 そして、悪いものほど記憶に残り、よいものほど記憶の彼方に忘れてしまう。 例え、両方が混ざり合った記憶だとしても。 僕のホームページに、幾重にも幾重にも罠を張った。その一番奥に、僕はラドンパの箱を置いた。 このホームページは、元は彼女が作ったのだ。 彼女は毎日日記を更新していた。 鬱病を患い、アパートの一室で首を吊るその間際まで。 この箱には、彼女との思い出の全てを詰めた。 その意味は、察して欲しい。 僕のホームページに、幾重にも幾重にも罠を張った。そこに、僕は彼女との思い出を収めた画像を全て張り、ラドンパと名付けた。 これで、他人に対しては鉄壁の守りが約束されたことになる。 でも、僕には意味がない。 ラドンパに仕掛けた罠も無意味。 良い思い出もいずれ風化する。 そして最後には、現実が僕を苛む。 呪い。 彼女を見殺しにした、僕への、これは呪いだ。
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