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何という傲慢であろうか。我々は特別な存在ではない。むしろ最も疎まれるべき、罵られるべき系譜を引き継ぐものだったのではないか。
引き裂かれそうな絶望に、だが染まったのは一瞬だけだった。次の瞬間、私は閃いていた。
全ての答えは碑文にあったのだ。最初から。
使命に燃える私は飛ぶように家に帰り、台所から包丁を持ち出した。そしてそのまま、父を刺した。
何が起きたかわからないまま頽れる父を見、母が絶叫をあげた。だが、その悲鳴は長く続くことはなかった。私が母の体に刃を突き立てたからだ。
罪を償うためには、その身を亡ぼすよりほかにない。声として認識していない碑文の文言が、まるで呪詛のように耳の中で反駁される。
そう、罪は償わなければならない。罪を償うことなく、子孫を繁栄させた我々不浄なる住民は、全て亡ぼされねばならない。
だが、天空に住まう民でそれを行うできるものは私しかいない……。
答えなんて、とうにわかっていた。
その後、私は手当たり次第に住民を殺した。刺して、殴って、刺して、刺して、刺して、燃やして、炙り出して刺して、刺して……思いつくありとあらゆる方法で罪深き者たちを亡ぼし、償いを済ませてやった。
石畳に血が吸い込まれ、またその上を覆うように別人の鮮血が流れる。その流れる血が彼らに脈々と受け継がれる罪の系譜を断ち切ってくれるのである。そう思うと、私はむしろ誇らしさを感じた。
誰からも誉を受けることなく、蔑まれ或いは無視されてきた私が。
天空の民が真に天空の民になるために必要な行為を行っている。しかもそれは他の誰にも成しえない。その高揚感が、私を更なる使命感へと駆り立てた。
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