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「き~み~が~いるな~つ~は~」
お気に入りの歌のフレーズと、浴衣。かんざしで纏めた髪から覗くうなじに、地上30センチで仲良く浮かぶ双子星。
紅に沈む海を背に、一番星より早起きな星が二つ、屈む僕等の目の前に。
「……綺麗だね」
「ああ」
励ます潮騒、弾む光。沈む心に、逸る想い。
全て抱えた夕焼け空は、次第次第に紫色に。
「海……今年最後だよね」
「ああ」
焦る波音に、急かす花火。悩む頭に巡る最悪。
全て見通す大海原は、空と同じく紫色へ。
心と同じく、紫色へ。
「……なあ」
励ます潮と線香花火。決めた心と断ち切る頭脳。
紫色は、期待と不安を混ぜた色。今の気持ちを写す色。
だけど紫色では進まない。
先に待つのが橙色か、真っ暗なのかは分からないけど。
……だから僕らは願うのだろう。
つかむ未来が橙色で、望む未来でありますようにと。
線香花火よお願いだ。もう少しだけ煌めいて。
不安だらけのこの俺を、優しく照らしてくれないか?
「……俺、お前の事が--」
掴む未来は、橙色か漆黒か。
知っているのは、空と海だけ。
紫色の、空と海だけ。
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