ある日の話

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授業が始まり、祐未は鞄の中からペンケースとルーズリーフを取り出す。 何気なく辺りを見回すと、もう机に伏している者もいれば、出席カードに名前だけを書いて友達に提出してもらうよう頼んだあと早々と教室から出て行ってしまう者もいる。 祐未はというと、またもや鞄を開けてウォークマンを取り出した。 祐未の一般教養の授業を受けるスタイルはいつもこう。 そうすれば眠くならない、というなんともよくわからない考えで四月から続けているのだ。 パカッと携帯を開き、メールの確認をする。 受信メールが一件と表示されている。 差出人を確認した後メールをみると、祐未は思わず小さく息をのんだ。 『やっほ!久しぶり。最近集んねーなー。そろそろ集まろうぜ!祐未と愛海と颯で』 …ほんとに久々だよ。 返信しようとボタンを押したが、なかなか指が動かない。 久々すぎて、どうしたらいいかわからないのだ。 だってユウキから連絡きたのって、二月の卒業式以来だったから… しかしそれでも、ボタンをゆっくりと押していった。 『久々。集まろっか。あたしもユウキ達に会うの久しぶりだし。愛海はちょくちょく会ってるけど』 とりあえず今言いたいことを全部打ち、素早く送信ボタンを押した。 送信完了の文字がディスプレイに浮かんだとき、祐未は気付いた。 絵文字を打つ余裕すらないなんて!
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