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ドン!
「いたっ!!」
気がつくと、私は壁に押し付けられていた。
両腕が頭の上で拘束され、身動きが取れない。
無意識でつむった目を開けると、間近には咲の顔が。
鼻と鼻がくっつきそうな距離にある。
怖くなってまた目をギュッと閉じた。
「フッ」
咲の小さな笑い声がして、腕が解放される。
「お前、やっぱ女だな」
そっと瞼を持ち上げと
そかにはちょっと離れた場所で優しく私を見つめている咲の瞳があった。
「弱いよ、お前。 強くみせかけてるけど……中身は、ほんとは……弱いな」
ドキッ
なんだか自分が見透かされた様な気がした。
「とりあえず、今日はもう帰れ」
瞳から優しさが消え去る。
「秋月に送らせるから」
「ぇ……でも……」
なぜかは分からないけど私は戸惑った。
「なんだ?……もしかして、お前……」
室内に重苦しい沈黙がながれ、知らず緊張してしまう。
強く握った手が汗ばむ。
そして――
「お前……腹減ったんだろ?」
ガクッ
「はい!?なん――」
「そうか!ははっ、やっぱな。そうだと思ったんだよ」
「ちょっと、違うってば!人の話しを聞――」
「しかたねぇな。ま、ちょっと時間には早いが今日は特別だからな。 麻希、お前の為にシェフに用意させるから行こうぜ」
「え、あ!ちょっと!!」
満面の笑みで背中をぐいぐい押され、部屋から出された。
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