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「あ、咲お兄ちゃん!」
部屋を出た所で翔汰君とばったり会った。
「お、翔汰。もう帰るとこか?」
「うん」
翔汰君が大きく頷いてみせる。
それから咲は考える様な仕草をして一言。
「せっかくだし、翔汰も一緒に夕飯食ってけよ」
「え……でも……」
(なっ、なに!? なんでそんな可愛い瞳で私を見るの!!)
子犬みたいで可愛い翔汰君に見つめられ、私はたまらず抱きしめたい衝動にかられた。
「ん?どうした」
「ぁ……うん。ボクがいても……邪魔じゃない?」
控えめなその言葉に一瞬ポカンとする私。
「何言ってんだよ。いいから、来るのか?来ないのか?」
「うん……行く!!」
「よし、決まりだな」
(こうやって毎度毎度話しが勝手に進んで行くのよね~……)
この人には逆らえない。
もう私の頭の辞書にはそく書き込まれている。
「あの、麻希お姉ちゃん」
それまで楽しそうに咲と喋っていた翔汰君は、唐突に私に話しかけてきた。
「ん?なに?」
「んーと、麻希お姉ちゃんと咲お兄ちゃ……じゃ、なくて……咲さんって……」
「翔汰、こいつの前なら普段通りで構わないぜ」
「あ、うん」
(えっと……もう何回もお兄ちゃんって言ってるの聞いてるけど……)
と内心苦笑い。
(可愛いなぁ)
自然と顔がほころぶ。
ぐにっ
「ったたたた!!」
咲に頬っぺたをつままれた。
「なぁにニヤけてんだよ、気持ちわりぃやつだな」
「も、も~!だからいちいち手出さないでよね!!」
「……なんか、咲お兄ちゃんと麻希お姉ちゃんって仲良い……」
「いや良くない」
ハモった。
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