場違いな席

3/14
前へ
/323ページ
次へ
食堂というにはちょっと広すぎる場所で、私は立ち尽くしていた。 さすがはお金持ちの家。 何もかもが違う。 なんだか自分の存在が場違いな気がしてしょんぼりしてしまう。 コツン 「っ!」 軽く頭をげんこつで叩かれ、咲を見上げる。 「お前、何自分が場違いなとこにいるみたいな顔してんだよ」 「…………」 「はぁ……。お前なぁ、俺のメイドって意味ちゃんと分かってんのか?」 (って……私はあなたのメイドになるなんて言った覚えはありません!) 「あ……!」 翔汰君が何かに気付いたのか、声を上げた。 視線の先を追い見る。 「なんだか騒々しいわね~」 そこには綺麗な女性が小首を傾げて立っていた。 「あら……?」 私に目を止めるや否や、その人はツカツカと歩み寄って来た。 「っっっ!!」 「こんな子いたかしら……。 あなた新入り?」 「あ……えっと私は……」 「俺がスカウトした」 どう言ったものか迷っていると、横にいた咲がはっきりと一言。 「スカウト……咲が?」 なんだか難しい顔で女性は呟く。 「あぁ、俺がした。……それより、早く席つこうぜ。 翔汰も腹減っただろ?」 「うん!」
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!

786人が本棚に入れています
本棚に追加