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外はそれほど暗くなってはいなかったが、それでも莉真と別れてから何時間経つのだろうと考えると頭がいたい。
「乗れよ」
気がつくと私は、一目で高級車だと分かる車の脇に立っていた。
咲が助手座席のドアを開けて待っていてくれている。
まるでドラマか何かの世界に入ってしまった様な光景に、私は戸惑いながも車の中に入る。
ドアが閉められ、しばらくしてから今度は運転席のドアが開いた。
さすがはお金持ちの息子といったところか、乗る動作まで優雅でかっこいい。
見とれていると私の視線に気付いたのか、咲がこちらを振り向いた。
「なぁに人の顔じろじろ見てんだ、よっ」
言いながら笑って頬っぺたをつねってきた。
「ひた!」
「ははは!人の顔じろじろ見てっからだろ。 ほら、ちゃんとシートベルトしろよな」
そう言った咲の身体が私の方に傾いてきた!
顔がほてって俯いたら
「っ!!」
咲はどこか意地悪な笑みを浮かべて私を覗き込んできた。
「……お前、顔赤いぞ」
心臓の鼓動がどんどん早くなる。
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