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咲の瞳に吸い込まれてしまいそうで、私は固まってしまった。
「フッ……やっぱお前、面白い」
手早くシートベルトを閉めると、咲は車を発進させた。
(ほっ……)
身体から力が抜けると同時に、顔の熱も引いた。
心拍数も正常に戻る。
「んで、麻希の家ってどこ」
「あ、はい。ええと……」
道案内をすること数時間。
「ここでいいのか?家」
咲が運転する車は無事に私の家の前に停車した。
「はい、ここです」
お礼を言って車を降りようとシートベルトに手をかけた時。
「あ、おい……服は……」
「あ!!」
咲に言われるまでメイド服姿のままだったことをすっかり忘れていた。
なんとなく重い沈黙が続き――
「なぁ……」
先に口を開いたのは咲だった。
「まだ時間あるか?」
「ぇ……まぁ……ない、こともないですけど……」
「なら、俺の知り合いが経営してるブティックが近くにあるから、そこで服買ってやる」
突然の申し出でビックリしてしどろもどろになる私を制して、咲は
「いろいろと連れ回したし、迷惑もかけたからな。……まぁ、そのお詫びみたいなもんだ」
とだけ言って私の返事も聞かずに車を発進させてしまった。
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