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定員に何着か服を見立ててもらい、私は試着室に入った。
どの服も私に似合うとは思えない値段の高そうな服ばかり。
だけど私は早く家に帰りたかった。お姉ちゃんのいる家に。
恐る恐る、選んでもらった服を試着しカーテンを開けてみると、定員の顔がぱっと明るくなった。
「まぁ!すごくよくお似合いですよ!」
「そ、そうですか……?」
なんだか恥ずかしくなって俯くと、それまで店内を何の気無しに歩いていた咲が立ち止まり、私の前にきた。
なぜかその顔はしかめられている。
「ダメだ」
不機嫌そうにそれだけ言うと、咲は素早く辺りを見回し、目に止まった服を手に取る。
「これ」
服を私に差し出す。
(えっと……この服を試着しろってこと……?)
呆然と服を差し出す咲を見ていると
「うわっ、ちょっと!」
しびれを切らせたのか、服ごと私は試着室に押し込まれた。
「な、なんて乱暴な……!」
とブツブツ文句を言いながらも、渡された服を着てカーテンを開ける。
「着たよ」
私は少し刺のある声で言った。
「そちらもよくお似合いですよ」
と定員が笑顔で言う。
「…………」
(ん?)
咲の視線を感じて見ると、感情の読み取れない顔でじーっと私に視線を向けていた。
「な、なに……?」
睨まれていると思った私は、しょんぼりと今着ている服を見下ろした。
「……やっぱ、似合わない、よね……」
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