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「じゃ、俺はこれで」
「はい……」
かがんで運転席にいる咲にお礼を言ってから背を向け、家に入った。
玄関のドアを閉めた途端、ドタバタと慌ただしい足音がしてお姉ちゃんと莉真が居間から飛び出してきた。
「麻希! あんた大丈夫なの!? 莉真ちゃんから変な男に連れ去られたって聞いたけど!?」
「麻希! すごく心配したんだよ!? なんで連絡くれないの!!」
二人同時に迫られて私は一歩後ずさった。
「ちょ、ちょっと、落ち着いて! とにかく詳しく話すから」
テーブルを三人で囲んで座り、私は莉真と別れてから何があったかを出来る限り詳しく話した。
話し終えると、二人は驚愕の声をあげ、それから沈黙した。
「……ねぇ……その咲って人、どんな人だった?」
「えっ……?」
お姉ちゃんが唐突に質問するものだから、私は不意をつかれた感じがした。
それでも質問にはちゃんと答えた。
「えっと……」
咲の姿を頭に思い浮かべる。
「赤茶色の髪に黒い目で、なんていうかこぅ……いかにもお金持ちですって感じの人で、スーツ着てた」
「確かに顔はかっこよかったわ」
と莉真がニヤニヤして言う。
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