薬師の思い

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翌日、男はまた訪れた。 老人は出なかった。 その翌日、またも男は現れた。 老人は姿を見せなかった。 そのまた翌日、男は来なかった。 老人は安堵し、起き上がろうとした。 しかし、老人は起き上がれず、二、三日が過ぎた。 男は訪れた。 世話をしていた人間の旅立ちを見るために。 離れた墓地に訪れた。 どうしても渡せなかった物を渡すために。 その老人の墓には何時も、白い錠剤が置かれている。
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