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それからどのくらいかかっただろうか。
とにかく必死だったけれど、全然覚えてない。
気づいたときには、川から上がっていた。
「はぁっ、はぁっ…。た…っ、助かったっ…」
私は息切れしながらも、ホッとした。
「大翔…っ、助けてくれてありが…」
大翔にお礼を言おうと、振り向いた。しかしそこに想像していた大翔の姿はなくて。
「ひ、大翔…?」
どこを見回しても大翔の姿はなかった。
「ひ…大翔っ!!」
私はとっさに川の中をのぞき込んだ。
濁っていて何も見えない。
私は、今度は川に落ちないよう、近くにあった木の枝に捕まって、届く限りの範囲で、川の中を手で探ってみた。
フワ……
指先に何かサラッとしたものが触れた。
さらに手を伸ばしてみると、柔らかい人肌の感触だった。
「…大翔!!」
私は手に触れたものが大翔だと確信して、枝にしっかり捕まりながら必死で引っ張った。
そして五分程かかってようやく引っ張り上げた。
やはり大翔だった。
「大翔っ!!」
呼んでも返事がない。
おそらく私を助けるのに力を使い果たしてしまって自分が岸に上がる力がなかったか、私を助けた後に足が吊ったかしてしまったんだろう。
どっちにしろ私のせいだ。
「大翔…っ、しっかりしてよぉ!!大翔っ!!」
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