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「はぁっ、はぁっ…」
病室から全力で走って、やっと私は路地にたどり着いた。
「…っ、ひろとっ…」
私はもう一度大翔を助けることを心の中で誓い、繁く生えている雑草の中をただひたすら進んだ。
しばらくすると井戸が見えた。まるで私が来るのを待ってたかのように、井戸の周りには不気味な空気が流れているようだった。
けれど大翔を救うと決めていた私は迷わず井戸のそばまで行った。
「うわぁ…」
井戸の周りの地面はとてもぬかるんでいた。
けれどそんなの構うもんか。
今はそれより…
「ここに…大翔のこの腕時計を…」
私は手に握っていた大翔の腕時計を見つめた。
「この井戸の中に…入れればいいのかな…」
私はちょっと井戸の中の様子を確認するために、井戸をのぞき込んだ。
「結構暗くて深いな…」
そのとき。
ズルッ…
ぬかるんでいた地面によって、足が滑ってしまった。「えっ…」
そして視界は暗くなる―…
「きっ、きゃぁぁぁ!!」
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