桜色

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「言ったでしょう。気にせずにはいられないと。 泣いている女の人を見過ごすなんて、僕には出来ません」 自分でも恥ずかしい言葉だと心の内では、恥をかく市助。 その場を立ち去ろうとした女は市助の方を振り向く。 再び微笑み言葉を紡ぐ。その微笑みは先程のものよりも優しく、 寂しげな様子は微塵(みじん)たりとも感じられなかった。 「貴方は、お優しい方なのですね」 「優しくなんてありません。男ですから」 ふっとふき出す女。市助は何がおかしいのかと首を傾げる。 「私(わたくし)は鈴木朔子(すずき・さくこ)と申します。 貴方のお名前は何と言うのですか」
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