高校デビュー

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「見たんなら描けるよな」  寺井が追い打ちをかけるように言った。  目の前には下手くそな女性の体があり、股間は真っ白だった。そして、私の頭も真っ白だった。  分からなかった。そもそも分かるわけがない。経験がないのだ。女性のヌードは見たことはある、でも肝心のアソコはいつもモザイクだ。  ペンを握ったまま私は、再び硬直した。  描けない。  そこで背後から声がした。 「お前、童貞だろ」  沢村だった。この出来事をずっと眺めていただろう沢村が、冷静な口調でそう言った。 「童貞なんだろ」 「ち、違う!」  言ってももう無駄だった。嘘で塗り固めた形は綺麗に崩れ去った。 「なんだやっぱりお前童貞か! やっぱり俺の勘は当たった!」  待ってましたと言わんばかりに寺井は大笑いした。  その瞬間、女子のざわめきや男子の嘲笑が教室中に鳴り響いた。私は紙とペンを握りしめて、その光景をただ呆然と眺めているしかなかった。  そんなざわめきの中、寺井が黒板に何かを書き始めるのを見た。
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