29歳。童貞です。

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 今日も1日が終わった。空を見上げれば綺麗な夕空で、カラスが空を飛んでいるのを見ながら帰りの電車が来るのを待っている。  疲れたなぁと一人呟く。  時計に付属されている日付を見れば、あともう少ししたら30歳になることに気づき、改めて自分の歳を実感した。  帰宅時の電車の中はいつも通りで疲れたサラリーマンやOLたちが下を向いていて、みんな疲れているんだなぁと同情した。今日もお疲れ様です、と。 「今日は週末だし、飲んでも良いかな」  なんとなくそう思った。歳を実感したからなのか、仕事の疲れもあったのか、少しでも気分転換をしたかったのだ。  とりあえず飲めるなら場所はどこでも良かった。私は駅から降りてすぐの居酒屋に入りカウンター席でビールと唐揚げをすぐさま注文した。  店内は週末もあってか賑わっていて店員が慌ただしく客の注文を聞いていた。  注文してから数分、まずビールがやってきて駆けつけ一杯という風に勢いよく飲んだ。ビールの苦みがほどよく心地いい。やはりビールはこうでなくっちゃなどと、ビールのCMみたいなセリフを頭の中でつぶやいた。  その後、唐揚げもやってきて、気持ちよく酔いがまわってきたところで、ビールのおかわりを頼んだとき、店に騒がしい客が大勢入ってきた。  なんだよ人が気持ちよく酔ってる時に、と私は店の出入り口を見ると見知った顔がそこにはあった。
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