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「うっそだー。俺の時は出たぞ。つか俺のツレも大変だったとか言うし、お前の彼女、処女じゃないんじゃね?」
「そんなことない。処女だった」
嘘を嘘で塗り固めたものが崩れるのが嫌で私は、また嘘を塗った。その発言もまたいけなかった。
「そういえば彼女の名前なんていうの? 大学はどこの大学なの?」
このときの寺井は勘が鋭かった。もしくはすでに嘘とバレていたのか、今となっては分からないが、私はその質問に対し、当時有名だったグラビアアイドルの名前を少し変えた名前を挙げ、大学は有名な大学の名を挙げた。学部は適当に経済学部にした。どこにでもある学部だからだ。
その日の質問の嵐はそこでおさまった。内心、俺もこれで高校デビューだという自惚れも少しあった。しかし、その嵐はまた私の元へ引き返したのは、その翌日のことだった。
学校へ登校した朝、クラスの女子が開口一番に言った言葉が私が塗り固めた嘘の形を簡単に崩した。
「あんたの彼女、大学にいないんだけど」
当時の私は、そこまで予想してなかった。甘すぎたのだ。私はそのまま席に着かず硬直した。
事の成り行きはこうだ。その女子には姉がいて、その姉は私が挙げた大学に通い、経済学部にいて、その日に姉に聞いたのだという。こんなことあるのかよ、とにわかに信じられなかった。
「えーマジかよ」
その話に飛びついたのはやはり、寺井だった。
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