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「じゃあ、お前の彼女どこにいんだよ」
寺井の顔はすでに笑っていて、私は慌てて何も考えないまま、存在しない彼女をさも存在しているように嘘をついた。
「や、辞めたんだよ。今は専門学校にいる」
言葉の最後はもうしぼみかけていた。これ以上の嘘はもう無理だと自分でも分かっていた。分かっていたはずだが止められなかった。
「じゃあ、どこだよ」
「デザイン専門学校……」
「は? なんで経済学部の奴がいきなりデザインなんだよ」
「か、彼女もいろいろあるんだよ」
寺井が食ってかかった。もう、ほっといてくれ、と私は思ったが、言葉は止まなかった。
「じゃあ、なんていうデザイン専門学校なんだ? 一回俺にも見せてくれよ」
このとき寺井は、私が童貞だと分かっていたはずだ。改めて思い返せばそう思える。目が笑っていたのだ。嘲笑したそうに笑っていたのだ。
「名前なんて知らない。まだ聞いてない」
「は? そんなことあるわけないだろ。まぁ、いいや。お前ちょっと待ってろ」
そういって紙とペンを取りだして書き始めたのは、女性の体だった。それもM字開脚の。
「エッチしたって言うんなら、ここ描けるだろ」
指さしたのはアソコだけ描かれていない女性の股だった。
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