霧氷 卯月

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聖恋「それを知った飛月は怒った。飛月は兄には迷惑をかけたくなかったのに体の一部をもらってしまう結果になっていた。その事が何よりも悔しかったんだと思う。飛月と卯月は生まれて初めて…最初で最後の兄弟ゲンカをした。 卯月は体の一部を渡した事で体調を崩しがちだった。もともと喘息をもっていたからそれと重なってどんどんやつれて行った。その半面飛月は元気になって行った。城中を歩き回れるようになっていた。2週間もたつと兄が気になったんだろう飛月が卯月の部屋に入った。部屋の隅の角で毛布に包(くる)まりながら卯月がうずくまってた。嗚咽を漏らしながら泣いてた。ずっと「ごめんな……飛月ごめんな………本当にごめんな…」ってずっと謝り続けてた。そんな兄に近づく事ができなかった。胃の半分を失った事で前みたいに食事が出来なく衰弱していった。 そんな兄を見て今度は自分が頑張らなきゃと思った飛月は兄の経歴を一から調べあげた。 実に多彩だった。医師・教師などをたくさん持っていた。特に医師は飛月にとって一番ショックでもあり嬉しい事だった。手術の理論は全て卯月が立てたから飛月は卯月に助けてもらった嬉しさの半面何故自分の体を犠牲にしたか?という事だった。まあ長くなっちゃったんだけど卯月は段々自力で回復して来ていた。回復して卯月と飛月は二人で二人暮しを始めた。両親は飛月が初めて折れずに意見を通した事と最後が近いと悟ったのか了承した。 そして二人で暮らし始めて2年がたったある日飛月は卯月の隣で息を引き取った。 彼が卯月が君を私の所によこしたのは過去を過去にしたかったからだと思うの。」 玖雨「過去を…過去に……したかったから…?」 聖恋「ええ。彼はいまでも夜うなされながら飛月ごめんなって泣きながら謝ってる。彼の中で過去に出来てない。この話を知ったのは結智と靉月と鷲・奏志とそんくらいしか居ない。やっと思い出に出来るのかな……」 そう呟いた聖恋の顔は何処か淋しげで儚かった。
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