第1章

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   黒木の家の中には誰もいない。誰ひとりとして。  彼の両親はドイツにある大会社の重役で、どちらも息子を置いて渡欧している。  ずっと昔から、黒木は一人だった。唯一、彼が両親と共に暮らしたのは、何年も昔のことだ。  天涯孤独。親が生きているというのに、これではそれと同じだ。 「……よし」  誰も居ない家の中で、彼は人知れず、ある決意を固めたのだった。
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